日本人インスリン依存型糖尿病患者のアンギオテンシンI変換酵素遺伝子の多型性の意義についての検討

概要

論文の詳細を見る
　アンギオテンシンI変換酵素 (ACE) 遺伝子のイントロン16には2種類の多型性が存在することが知られ，その多型性と高血圧，虚血性心疾患，腎症などとの関連が検討が進められている。今回我々は小児インスリン依存型糖尿病 (IDDM) 患者34人を対象にACE遺伝子の多型性と血中ACE濃度，クレアチニンクリアランス (CCr)，尿中アルブミン排泄率 (AER)，リポプロテイン(a) [Lp(a)]，動脈硬化指数との関連を検討した。genotypeによりDD; 4人，DI; 18人，II; 12人に分類され，各群の年齢，HbA1cに有意差は認めなかった。ACEはIIでは有意に低下し，DIとDDには有意差を認めなかった。CCr，AERは3群に有意差を認めなかった。Lp(a)，動脈硬化指数ともにII群において有意に低値を示した。ACEの発現調整に関与するイントロン領域のgenotypesの違いは，糖尿病のmicroangiopathyおよびmacroangiopathyの長期予後に影響する可能性がある。今後長期的に経過観察を行い，ACE多型性の糖尿病合併症の発症または進行への関与を明らかにする必要がある。