イタリア大都市における地区行政の展開 : トリノ市第2地区を手がかりに
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
論説(Article)わが国では現在、大都市制度改革が進行し、そのなかで都市内分権がひとつの論点となっている。実はイタリアでは1970年代から、とりわけ大都市では市内に「地区」を設定し、ここに行財政権限の一部をゆだねて都市内分権を実践してきた経緯がある。もちろん、わが国とイタリアの地方自治制度のちがいには留意を要する。しかし、たとえば政令市が今後にいっそう行政区への都市内分権を進めるのであれば、イタリア大都市の経験から得られる示唆も少なくないのではないか。このような問題関心のもと、本稿ではトリノ市を例に、地区行政の展開について検討していく。トリノ市は1990年代から脱工業化を推し進め、都市再生の先進都市に生まれ変わった歴史を持つ。市内は10地区に区分され、それぞれに地区住民評議会と地区センターが置かれている。本稿はこの10地区のなかでも、第2地区に絞って検証を進めた。その結果、トリノ市本庁から地区センターに対しては、必ずしも大胆な権限委譲が進んでいるとはいいがたく、地区予算も現在は縮減している実態が把握された。他方で、地区センターは単なる出先機関にとどまらず、職員は地区住民をはじめ多様な主体に地区活動への参加を促し、ラウンドテーブルを通じた主体間の連携も促進していた。また、地区住民評議会とも連携しつつ、独自のプロジェクトを立ち上げて実践し、地区内の問題状況の改善にも取り組んでいる状況が確認された。このような動向をふまえ、今後の研究ではわが国との比較・考察も視野に入れながら、個別の論点に関するより詳細な分析を進めていきたい。
- 2013-09-20
著者
関連論文
- 大都市での選挙粛正運動における町内懇談会とその実態--戦前の大阪市北区を手がかりに
- 総政人の巧-連載第3回 : 出口孝浩さん , 新たなステージに身を投じて
- 地域力再生の条件 : 自治体行政としての条件整備を中心に
- 自治体内分権のしくみを導入する際の留意点--甲州市の地域自治区制度廃止を事例として
- 自治省コミュニティ研究会の活動とその成果
- 総政人の巧 : 連載第4回, 黒澤寛己さん, 仕事をしながらの研究生活
- 日本のコミュニティ政策の萌芽
- 総政人の巧 : 連載第2回
- 総政人の巧(第1回)財団法人行政管理研究センター研究員 伊藤慎弐さん--行政管理研究センターからの便り
- 図書紹介 吉田徹著『ポピュリズムを考える』--民主主義への再入門
- 大都市の地域自治組織廃止事例の検討--東京都中野区の地・住構想廃止を事例にして
- 大都市での選挙粛正運動における町内懇談会とその実態 : 戦前の大阪市北区を手がかりに
- 大都市の地域自治組織廃止事例の検討 : 東京都中野区の地・住構想廃止を事例にして
- 自治体内分権のしくみを導入する際の留意点 : 甲州市の地域自治区制度廃止を事例として
- 地・住構想30年における住区協議会の変容 : 東京都中野区の江古田住区協議会を例に
- 書評 山崎亮『コミュニティデザイン : 人がつながるしくみをつくる』
- 大都市における都市内分権の可能性と留意点
- 内発的発展文献・論文リスト
- トリノ市の地区住民評議会 : 動態分析にむけて
- 中野区地・住構想の一断面 : 野方住区協議会の活動を手がかりに
- 合併前後の足助地域自治区
- イタリア大都市における地区行政の展開 : トリノ市第2地区を手がかりに
- イタリア大都市における地区行政の展開 : トリノ市第2地区を手がかりに
- 地域協議会が「協働活動の要」として機能する要因は何か? : 勝沼地区(甲州市)と足助地区(豊田市)の比較から
- トリノ市における地区住民評議会の実践
- 空き町家の増加にどう対処するか : ならまち町家バンクの取り組みを手がかりに
- 空き町家の増加にどう対処するか : ならまち町家バンクの取り組みを手がかりに
- 大阪市における地域活動協議会の設立とその課題 (特集 大都市の地域自治のいま : 京阪神四市を事例として)