自治体内分権のしくみを導入する際の留意点 : 甲州市の地域自治区制度廃止を事例として
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概要
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研究ノート(Note)山梨県甲州市は2005年11月の合併を契機に、地方自治法に基づく地域自治区制度を導入したものの、2008年3月末をもってこの制度を廃止させるにいたった。本稿では、こうした甲州市における制度導入から廃止にいたるまでの一連のうごきの検証をとおし、制度廃止にいたった要因の解明を行うとともに、今後において自治体内分権のしくみの導入をめざす自治体にとっての留意点の明確化を試みる。そこで、本稿ではとりわけ、地域自治区制度における地域協議会の設置は果たして住民自治の強化につながるのか、という観点から検討を進めていく。そして、事例としての甲州市に関しては、塩山市、勝沼町、大和村の3市町村での合併により誕生したが、このうち勝沼町が合併協議の初期段階から地域自治組織の導入を主張していた。なぜなら、勝沼町は合併後の新市でもこれまで培ってきた独自性を残したかったからである。しかし、主に6市町村で進行してきた合併協議は紆余曲折し、結果的に合併期日まで残り1年という時点で先の3市町村による合併をめざすことになった。このとき、勝沼町が提唱してきた地域自治組織については、限られた期間での合併を円滑に進めるために導入それ自体が目的化してしまったのである。こうして新市で導入された地方自治法に基づく地域自治区制度であったが、地域協議会の活動は甲州市行政当局への意見陳述や会議のあり方の議論にとどまってしまった。この状況をかんがみ、庁内から地域自治区制度そのものの廃止議論が沸き起こり、地域協議会委員へのアンケート調査や議会での廃止決議の末、甲州市の地域自治区制度はわずか2年5カ月で廃止されるにいたったのである。そして、こうした甲州市における一連のうごきをふまえると、今後に自治体内分権のしくみを導入しようとする自治体に対しては、大きくふたつの教訓が得られるように思われる。すなわち、「綿密な制度設計」および「協議会組織そのものの活性化」である。
- 同志社大学の論文
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