網走湖産ワカサギ降海移動期の発育段階と栄養状態
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概要
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網走湖におけるワカサギには、湖内残留型と遡河回遊型が同所的に存在することが知られている。4〜5月にかけて流入河川で孵化したワカサギ仔魚は、ただちに網走湖に降下し湖内で成長する。その後、6〜9月にかけて一部の個体が流出河川である網走川を通じて降海する。降海時期には、湖内には体長や発育段階が異なる同一年級の個体が分布しているが、個体の体サイズや発育段階の降海移動への関わりは、検証されていない。また、降海個体の出現要因について、降海時期直前の網走湖内におけるワカサギ仔稚魚の分布指数が高いほど降海個体数が多いことが明らかとなっており、ワカサギ降海個体の出現と湖の環境収容力との関連が指摘されている。このことは、網走湖におけるワカサギの生活史分岐が生じる時期に、網走湖内の餌環境の低下あるいはワカサギの摂餌要求の増大などによってワカサギの栄養状態が低下し、降海個体出現の要因となっている可能性がある。しかし、これまでに網走湖のワカサギの栄養状態および栄養状態が回遊型の分岐に及ぼす影響については、明らかになっていない。栄養状態の指標として、多くの魚類仔稚魚でトリグリセライド/リン脂質比(以下、TG/PL比)の有効性が示されている。TG/PL比の時期的な変化および回遊型による差異を明らかにすることで、降海個体出現の背景にあるワカサギの栄養状態の変化を推定出来ると考えられる。本研究では、網走湖産ワカサギにおける降海個体の出現条件を検討するため、湖内残留個体と降海個体の体サイズと発育段階の比較、また、栄養状態の指標としてTG/PL比の時期的な変化と回遊型による差を検討した。
- 北海道立水産孵化場の論文
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