『徒然草』研究-第三八段の価値-
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概要
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本稿は「04紀要」掲載論文、「09紀要」掲載論文をふまえ、第一部末尾部分の章段と第二部冒頭部分の章段を吟味することにより、第一部冒頭部と第二部末尾部の境界を明確にし、あわせて著者兼好の思考の変遷を明らかにしていこうとするものである。 09紀要では、第三一段から第三七段を一部から二部への「つなぎの巻」ととらえ、第三八段を、「復活」の謎を解く段だと考えたのである。 本稿は「一、はじめに 二、最近の『徒然草』研究から 三、従来の『徒然草』観 四、本分の考察 五、第三八段の再検討 六、一部の関連する段 七、『方丈記』との関連 八、第三八段の過激性 九、結論」の八章からなる。一番重視したのが第三八段であり、本段に、以前の段はどのように流れ、関連しているのかということと、本段以降どのように流れ、展開していくかという点に重きをおいた。その結果、一部から二部への、彼の執筆態度(姿勢)が、書物(漢籍)を友としているうちに、老荘思想に大きな影響を受け、老荘思想を根幹に、成長・発展したとう事実を物語っていると推定された。 二部は、第三一段から書き始められ、第三七段まではいわゆる「つなぎの段」と考える。 第三一段からは、基本的に、抽象的な、無名の人間の意見をとりあげ、「をかし」「よし」と肯定している。そして、それこそが、本作品の意義だと確認し、第三八段を力強く記すに至った。その後の兼好の価値観は、第三九段の法然上人の教え、第四○段の因幡国の娘の話、第四一段の競馬にまつわる話、第四二段の恐ろしい病気にかかった行雅僧都の話などへとバラエテイに富んだ内容を描き出す。これらはいずれも新しい発見である。兼好の既得の知識・価値観からは想像もつかない事実の発見に目をむけたと言えよう。 とにかく第三八段は、本作品にとって、もっとも重要な段の一つとして位置づけておかなくてはいけないというのが本稿の結論である。
著者
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