元代前半期の碑刻に見える科挙制度用語-上-元代石刻札記
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概要
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中國史研究における有力な史料群として,石刻史料がある.近時,石刻書の影印出版が盛んとなり,入手が容易になったこともあって,各時代史の研究に利用されつつある.営然,元朝史の研究にとっても役立つものであるはずであるが,實際には,あまり利用されているとは言えない.その理由の一つとして,石刻史料の集成の段階での不充分さがあげられるであろう.すなわち,〈金石葦編〉とく八墳室金石補正〉という,牧録範團が中國全龍にわたり,しかも,基本的な史料を網羅しており,信頼できる文献」であるとされる石刻書が,いつれも,金朝をその牧録封象の下限としていて,元朝の石刻を取り上げていないという黒占である.〈爾漸金石志〉,〈山右石刻叢編〉,〈山左金石志〉などの,一地方を輩位とした石刻書が,元代までをその封象として,それぞれの地域の石刻を牧録しており,各々すぐれた書物ではあるが,中國全骨豊にわたる元代碑刻の集成は未だなされていないのである.目録類としては,古くはく篠古録〉,最近ではく石刻題践索引〉があって,元朝までを採録の封象としているが,本文を直接眼にすることが出來ず,隔靴掻痒の感を否めない.從って,元朝の石刻史料を研究の材料とする時には,まず,石刻そのものの集成からはじめる必要がある.しかも,その集成にあたっては,上記の因地著録の書をはじめとする石刻書に止まっていては不充分であり,各方志類の"金石"や"藝文"といった部分に牧録されている史料の検討をも行なわねば,充分なものとはならないのである.それにもかかわらず,〈元史〉はもとより,〈元典章〉をはじめとする,この時代特有の史料によってもカバーしきれない元朝史の部分を明らかにしてくれる,というメリットを考えれば,今後,元朝史研究者による石刻の積極的な利用が期待される.以下,元代の碑刻を取り扱って研究を進めていく過程で氣がついた問題を取り上げ,考えていきたいと思う."元代石刻札記"と名付けたゆえんである.しかし,何分にも,現存する地方志類の量は膨大であり,しかも,元朝史研究のための史料という視黒占からの整理は全く行なわれていない.從って,以下の文章でも,史料の整理と提示が一つの目的となるであろう.筆者も,現在調査と集成をすすめつつある途中であり,この文章は,その途上での産物であって,完全な方志類の調査の上にたっての報告ではない.この論文で使用したもの以外にも,關連する碑刻で,未だ眼にしていないものも少なくないと考えられる.諸學の御教示をお願いしたい.
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奈良大学 | 論文
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