中心地システムの理論化について
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概要
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Christaller が中心地理論を発表して以来,さまざまな地域でこの理論の検証がなされてきた.それらは,主に,この理論の骨子である中心地の階層構造を検証しようとするものである.Viningに始まる中心地の階層構造批判が,都市規模の連続的な関係を示したRank-SizeRule'に依拠したものであったことは,周知の事実であり,この批判に関する論争の紹介と分析は,西村睦男,森川洋によってすでになされている.これによると,この問題は,Berry,Barnum,Tennantによるアイオワ州南西部,南ダコタ州などの実証研究によって一応の解答が得られたと言える.中心地規模の階層性,連続性の問題は,ミクロ的か,マクロ的かという地域のスケールに起因し,ミクロレベルでは,中心地構造の階層性がみられるが,マクロレベルでは,中心地の規模的連続性が顕著になる.このことは,従来の検証例にみられた,階層的か連続的かという二者択一的な考え方に対する批判がなされたと考えてよい.つまり,対象地域のスケールの問題を抜きにした中心地理論の検証は,無意味であると言える.経験的法則(規則性)としてのRank-SizeRuleを理論的にどのように説明するかという問題は,都市地理学研究者の永らくの課題であった.Simmonは,このRuleを確率過程の累積結果による安定状態を示すものとして,確率分布論の立場から理論的に説明した7).これ以後,この「安定した状態」の概念が都市地理学研究に導入され,一般システム理論(GeneralSystemTheory)8)への接近がみられるようになる.Bertalanffyの一般システム理論では,この「安定した状態」を正と負のフィードバックによる組織化された均衡状態(定常状態Steady-State)として動的に把えているからである.Berryは,この「安定した状態」の概念を中心地研究に取り入れ,従来,静的な階層理論として批判されてきた中心地階層構造論を,動的な階層構造論として把握しようとした.この試みは,中心地システムの理論化となって現われている.中心地システムの理論化とは,一連の実証的研究により見付け出された中心地に関する二種類のモデルを「中心地システムの定常状態」の概念で関連付けようとするものである.本論文は,Berryによる中心地システムの理論化の意義を認めつつ,この理論化の問題点を考察しようとするものである.Berryは,二種類のモデルを中心地システムの定常状態の諸特性を表わすものとして関連付けようとしたが,このことが,論理的に矛盾しないものかどうか,中心地システムの理論化における問題点を考察してみる.そのためには,モデルそのものにおける問題点とモデルの理論化における問題点を区別して扱う必要がある.
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