山形における仏壇工芸について
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概要
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わが国の伝統工芸の一つに漆器工芸がある.奈良は諸工芸の濫觴の地であるが,なかでも,もっとも伝統のあるものが,奈良漆器であろう.正倉院に残る螺鈿漆器はその最高のものとされている.この漆工は奈良より各地に広がり,その風土に応じて,特産地を形成している.しかし,周知の通り,この工芸は今日では,その製法の特殊性の故に,一部の家具,膳,盆などの高級板物に余命をつないでいるにすぎない.ところが,このような漆工のなかで,いよいよ盛行をみせ,かくれた売れ行きを示しているものに,漆工を集大成したものといわれる,わが国独自の仏壇工芸がある.わたくしは,この仏壇工芸を中心として,各地のものについて,いささか調査と研究をつづけ,若干の成果を発表してきた.この小論も,それらに続くもので,東北地方の代表として,山形のそれをとり上げた.東北はわが国の文化的風土の面においても一つの地域である如く,それに相応じて,仏壇工芸においても,他の地域にみられない特殊なものがある.すなわち,山形独自の「位牌厨子」と称するものをもっているのである.この独自のものは,東北地方の風土性,ないし宗教性に強く支えられているものであると考える.このような観点から,この山形仏壇をとりあげる.したがって,これは山形の単なる生産地理でなく,これによって,東北地方の風土性に一つのライトをあて,東北風土の一面を明らかにせんとするものである.よって,仏壇そのものには,必ずしも多く触れられていない.これが小論の目標とするところである.
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奈良大学 | 論文
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