アルフレッド・マーシャルの「経済学原理」における経済地理的原理に関する覚え書き
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概要
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経済立地論を構成する経済現象に関する空間原理が,従来,経済学の主流からは亜流視されてきたことについてはすでに述べた.アイザード(W. Isard) が地域経済学を体系化する上で,その発端をフォン・チューネン (J. H. von Thunen) に見出しつつ,それまでの経済学をアングロ・サクソン的偏見に依拠したものとし,経済空間における原理の存在とその機能を正当化しようとしたことはまだ最近のことである.筆者はアイザードのいうアングロ・サクソン的偏見によって構築されたとされる経済学の主流をとりあげ,その経済学の主流が経済現象に関する空間認識を果して無視していたかどうかを検討し,無視されていたとすれば,それがなぜ経済学の中で大きな要素として位置づけられなかったかについて,ささやかな検討をしようとする.それは経済地理学の成立とその依拠すべき基盤を明らかにする上でもきわめて重要であると考える.そのさい,経済学の主流と空間原理を打ち出そうとしてきた経済立地論との関連性に着目し,経済立地論が経済学の主流とは無関係かつ孤立的に成立しえたものではないこと,経済学の主流の中において空間的な認識が必ずしも欠如しておらず,それらこそが経済立地論の成立,発展に多大な影響を与えたことを認めたい.そのような一例として,先にアダム・スミス(A. Smith) の地代論を中心にとりあげ,その延長にフォン・チューネンの空間原理が展開していく基盤を見出した.本論ではアイザードがアングロ・サクソン的偏見があるとして,その一例に引用してとりあげたアルフレッド・マーシャルの「経済学原理」 ("Principles of Economics") を中心に,彼の空間認識の仕方とその内容について検討する.
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奈良大学 | 論文
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