京都月並ちらし
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
化政期以降、三都を中心に爆発的に流行した月並・奉燈・奉額などの発句合に於て、不特定多数の投句者から句を募るために配布されたちらしは、現代に伝わる可能性が極めて少ない。それは、選者・題・点料・締切日・景品などを通知することを主たる役目とするちらしは、発句合の選が済み入選句披露摺り物と共に草稿が返草されてくれば、不要のものとなるからである。入選句披露摺り物は投句者の手許で綴じ合わされて現代にまで伝わる例は多いが、ちらしがそのような扱いを受けることはまずない。従って、かような発句合のちらしを正面から取り上げた論考も少なく、今栄蔵氏「幕末江戸月並俳譜資料」(『中央大学紀要』第三十九号)・服部徳次郎氏「名古屋近郊における庶民の俳譜活動(1)」(『中京女子大学紀要』第十二号)の二点を数えるに留まる。今氏は御架蔵の『投句募集ちらし張込帖』に収録の江戸宗匠による天保以降幕末ごろまでの発句合ちらし二百余点のうち九十三点を翻刻紹介し、ちらしからのみ知ることができる「投句締切日から返草までの期間」「締切から開巻までの日数」「投句の届所」「入花(点料) 及び景品」などについて詳細な考察を加えられた。また、服部氏は名古屋宗匠の文久から明治に至る発句合ちらし五十七点を取り上げ、九葉の写真を示すと共に、今氏と同様の観点から名古屋幕末の発句合の実態究明に努めておられる。次に侯たれるのは、当然、上方の発句合ちらしの出現であろう。しかるに、筆者は最近、桜井武次郎氏の御好意により氏が一括入手された京都宗匠による化政期のものとおぼしき発句合ちらしとそれに関連する入選句披露摺り物など四十数点を拝見する機会に恵まれた。数としては今・服部両氏が紹介されたそれに及ぼず、範囲を京都に限ってみてもおそらく大海の一滴に過ぎないと思われる。しかし、かようなちらしはまとまって出現することが望み難い以上、これは極めて貴重な資料と言えよう。よって、桜井氏の御許しを得てここに翻刻紹介し、ちらし・摺り物の性格を巾心に気付いたことを記しておきたい。
- 奈良大学の論文
奈良大学 | 論文
- 文化的自己観と高齢化に対する態度
- 日本人成人の相互独立性--クラスタ分析による類型的理解の試み
- 社会的比較に於ける自己卑下傾向と 相互独立性-相互協調性との関連
- 相互協調的自己観と内集団バイアス
- 大脳半球性のパターンに関する研究