沿岸域における生物起源ケイ素の分析手法の検討と春季周防灘における分布
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概要
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周防灘及び広島湾で採取された粒状懸濁物と堆積物試料を用いて, 生物起源ケイ素(Biogenic silicon: BSi)の代表的な分析法であるアルカリ抽出法について, 炭酸ナトリウムを用いた分析条件(濃度・抽出時間・希釈率および中和法)の検討を行なった。その結果, 粒状懸濁物では1%炭酸ナトリウム, 85℃で60 分, 堆積物では, 5mg以下の試料で1%炭酸ナトリウム, 85℃で120-180分の抽出が適していた。本分析法は, 鉱物由来のケイ素(Lithogenic silicon: LSi)の影響を最小限にとどめ, 主に珪藻及びその死細胞のケイ酸塩殻を選択的に測定するのに適していると考えられる。抽出上澄み液中のSi濃度は, MQ水で5倍以上の希釈, 及び0.5N塩酸を用いた中和法により, モリブデン・ブルー法によるSi分析が可能であった。本分析法を用いて, 2004年4月に周防灘における粒状懸濁物中のBSi に関する予備調査を実施し, クロロフィルa(Chl.a), 粒状有機炭素(POC)同様に, BSiは灘西部の浅海域で高濃度で, 東部で低濃度であることを明らかにした。Measurement of biogenic silicon (BSi) in suspended matter and sediments is not simple because of the interference of lithogenic silicon (LSi) in the samples, particularly in coastal waters. We tested applicability and limits of a wet-alkaline digestion method for BSi analysis in suspended matter and sediments collected at Suo-nada, Seto Inland Sea.For suspended matter, a digestion (using 1%Na2CO3) at 85 ℃ for 60 min was appropriate, and digestion for 120-180 min was suitable for sediments. We also tested the interference of alkaline solution to the Si analysis using by the molybdenum blue method. Dilution factor more than 5 times by MQ water or neutralizing the pH by 0.5N HCl was recommended for the method. By applying this method, a preliminary investigation on BSi in suspended matter at Suo-nada was conducted in April 2004.
- 広島大学大学院生物圏科学研究科の論文
- 2006-12-20
著者
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