マーケティング・チャネルにおける流通サービスのカスタマイジングと協調的関係
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概要
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論文今日,流通業者と協調的関係を構築して,自社製品に適合するようにカスタマイズされた流通サービスの提供を受けることが,製造業者にとってますます重要になってきている。しかし,製造業者がなぜ流通業者との協調的関係を拡張しようとする意図を持つかを説明するという課題に対して,既存研究は概して2つのアプローチで取り組んできたが,そのいずれもが課題への解答に成功しているとは言いがたい現状にある。すなわち,特定の製造業者に対して自身の資産を特殊化した流通業者は,その製造業者によってホールドアップされる危険があるため,協調的関係の構築・維持は不可能であると提案されたり,このホールドアップ問題の背後にある利己的行動の前提を無視して,コミットメントや信頼といった社会心理学的構成概念を導入することによって協調的関係を説明しようと試みられたりしてきたのである。そこで,本論は,こうした既存の2つの研究アプローチの問題を克服するために,繰り返しゲーム理論アプローチのアイデアを援用し,マーケティング・チャネルにおける製造業者の関係拡張意図を説明するための因果モデルを構築した。そして,構築した因果モデルに対して,144社の製造業者のビジネス・ユニットのマネジャーから得られたデータを用い,構造方程式モデリングによって実証分析を行った。分析の結果,製造業者の関係拡張意図は,流通業者の資産特殊性が製造業者の長期志向を高めることを通じて,高まるということが示された。また,流通業者の機会主義によって低まることも見出された。
著者
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