流通チャネルにおける協調的関係の生成
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概要
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樫原正勝教授退官記念号論文本論の目的は,流通チャネル内において,製造業者とその製造業者に物的資産を特殊化した流通業者とが,関係的契約(フォーマル契約のない協調的関係)をいかにして維持するのかを説明する繰り返しゲーム・モデルを開発し,経験的テストを行うことである。モデルの仮定として,各回のゲームにおいて,製造業者は流通業者をホールドアップするインセンティブを持つ一方で,流通業者は特殊化された物的資産を別の製造業者のために用いるインセンティブを持つものとする。さらに,彼らはトリガー戦略を採用するものと仮定する。このとき,彼らがゲームを1回のみプレイするならば,お互いが協調的関係から逸脱するであろう。しかし,彼らがゲームを繰り返してプレイするならば,十分に高い割引因子を持つ限り,協調的関係が生成する。本論は,彼らが関係的契約を維持する均衡条件を得た。さらに, 2つの要因がこの関係性に影響を与える。第1に,流通業者の資産特殊性が高いと,製造業者が協調を選択するのに必要な割引因子の最小値が相対的に小さくなる。第2 に,流通業者の機会主義が高いと,流通業者が協調を選択するのに必要な割引因子の最小値が相対的に大きくなる。実証分析の結果から,(1)製造業者の割引因子が低い場合であっても,流通業者が資産を高度に特殊化しているときには,製造業者が協調の長期的便益を逸脱の短期的便益よりも重要なものとみなすこと,(2)流通業者の割引因子が高い場合であっても,流通業者が機会主義的に行動するときには,流通業者は協調より逸脱を好むことが示された。
著者
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