プル-スト的手紙--『失われた時を求めて』における手紙の機能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
マルセル・プルーストは生涯に約6000通の手紙を書いているが、それほど彼は手紙を偏愛していた。彼の小説『失われた時を求めて』が実人生をなぞった物語である以上、この小説に手紙が多く出てきても不思議はない。しかしその働き、意味するところは他の作家の場合とかなり異なる。一般に手紙は、物語の発端となったり、それを締めくくったり、時にはその流れに大きな変化を与えたりする。つまり、小説の構造、物語の流れと密接な関係にあるといえる。それに対し、プルーストの小説では、このような働きはせず、本来他者とのコミュニケーショソの手段であるはずの手紙が、逆に他者とのコミュニケーショソの困難を表している。小説ではしばしば、手紙は行き違い、偽装され、逸脱する。差出人の意図に拘束されることなく、意外な結果を導き出している。それがプルースト独自の一つの世界を形成していることは事実であるが、そうした手紙の否定的な側面の強調は、他者との精神面での不一致、ずれを表していることも忘れてはならない。
- 奈良大学の論文
奈良大学 | 論文
- 文化的自己観と高齢化に対する態度
- 日本人成人の相互独立性--クラスタ分析による類型的理解の試み
- 社会的比較に於ける自己卑下傾向と 相互独立性-相互協調性との関連
- 相互協調的自己観と内集団バイアス
- 大脳半球性のパターンに関する研究