近世の村と寺--紀伊国伊都郡境原村を事例として (近畿地方村落の史的研究) -- (村)
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概要
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本稿は、紀伊国伊都郡境原村と岡村の小峯寺・東光寺を事例に、一七世紀半ばから一八世紀半ばにかけての近世村落と寺院の関係について考察したものである。その際、近世社会を諸社会集団の重層と複合として把握した社会集団論の視角を取り入れた。すなわち、村と寺の問題を、村(百姓)の視点からだけではなく、寺(住職)の側にも身を置きつつ、複眼的に考察してみた。その結果、①幕藩領主の本末制度整備を主体的に利用して、本寺に接近することにより、村方(堂座)から自立しようとする小峯寺住職、②村方を特権的に代表して住職と対立しつつ、次第に一般村民から離反され、地士身分獲得にも失敗して衰退していく堂座、③一七世紀の堂座に代表される受動的な存在から脱却し、一八世紀前半には発言力を強めていく一般村民、という各層の動向を明らかにした。This paper examines early-modern relationships between villages and temples in the period from the mid-seventeenth to the mid-eighteenth centuries with the village of Sakaihara in the Ito district of Kii province and two Buddhist temples, Omineji and Tokoji, located in the village, as case studies. I have adopted the perspective of early-modern society as a multilayered mixture of different social groups. Specifically, village-temple relations are studied here from different perspectives, not just from the viewpoint of the village (farmers) but from that of temples (the clergy) as well. This approach reveals the specific movements of different groups, including 1) the chief priest of the Omineji Temple who sought to be independent from village leadership (doza) by approaching a head temple, taking advantage of the shogunal and domain governments' efforts to establish a main-branch temple system; 2) the doza which, acting as representative of the village, confronted the chief priest of the temple and went into decline as it gradually became alienated from the villagers in general and ultimately failed to acquire the status of jishi (rural warrior class); and 3) the village people in general who pulled themselves out of seventeenth-century doza-Ied passivity and increased their voices in local affairs in the early eighteenth century.
- 国立歴史民俗博物館の論文
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