不妊女性のナラティブ(語り)による不妊体験の感情変化とビリーフの研究
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概要
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本研究の目的は, 不妊女性のナラティブ(語り)を通して, 不妊女性の不妊体験を知り, その体験の意味づけやビリーフとを知ることである. 本研究は, 質的研究方法を用いた帰納的記述的研究とした. 対象者は, 既婚で体外受精を開始した, 出産経験のない7名である. 分析方法は, 逐語録を作成し重要な語りを抽出, 精読し不妊女性の体験に身を置いた. 語りの意味を考え, 不妊体験の意味づけを抽出し, さらに語りから物語をみつけそこからビリーフを抽出した. 結果, 不妊体験の物語は, 不妊治療で限界まで挑戦したことで得たものと治療の限界を感じること, 思いのままに妊娠できない現実に直面するであった. それらを支える要因は, 夫や他者の支えと妊娠の可能性と妊娠成立の不確かさであった. 対象者は, 妊娠への可能性を信じ治療の度に期待を高め, それと同じだけの失望を繰り返していた. 感情は, 波のようであり極限まで変化するものを大波パターンとし, 治療に期待をしないように自制することで失望や落胆を, 最小限に押さえるような変化をするものを小波パターンとした. 7事例のうち1事例のみ大波パターンであり, 他の事例は小波パターンであった. 不妊体験は, 妊娠への期待の感情や失望の波が押し寄せるように繰り返し, やむことはない体験であった. しかし, 不妊女性は, 不妊体験を夫の優しさや心の支えに気づき, 夫婦で今後の生き方を考えられたことを価値があるものと意味づけていた. 不妊女性は, 不妊という苦悩の体験を夫と共有し, 夫を父親にするために子どもを産むことであるというビリーフや, 子どもを持つことで, 女性として価値を見いだせるというビリーフが存在していた. 不妊女性が不妊The purpose of this study is to examine the experiences of sterile women, assess the significance of the experiences, and extract the beliefs of the women. Used in this study was an inductive and descriptive approach using a qualitative approach. Subjects were seven married women who had never given birth to a child before and had begun in-vitro fertilization. The authors had them narrated their experiences and made the word-for-word records of the experiences to analyze the experiences and extracted their beliefs. The sterile women experienced repetitive expectation of pregnancy and disappointment. They repeatedly believed in their possibility of pregnancy, strengthened their expectation every time they received treatment for sterility, and were desappointed as intensely as their expectation. Feelngs which were like waves and changed to the utmost limit were classified as the large-wave pattern. Feelings of sterile women who controlled themselves so that their disappointment could be minimized were classified as the small-wave pattern. They experienced repetitive waves of expectation and disappointmen. They were aware that sterility had helped them to (i) become aware of the tenderness of and support given by theirs husbands and (ii) ponder, together with their husbands, how to live their lives in future. They had the beliefs that the wife gave birth to children to make her husband a father and, thereby, find her own value. Thus, they suffered from sterility and, at the same time, sterility helped them to ponder on the marital relationship. That sterile women narrate their experiences would alleviate their sufferings, heal their mental wounds, and be useful for nursing.
- 香川大学医学部看護学科の論文
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