磁性と転位　第５章塑性変形による磁気遷移

概要

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前章まで強磁性体における塑性変形の磁性に及ぼす影響を述べた。強磁性体では塑性変形により導入された転位や逆位相境界の周りでスピンが磁壁移動の際に障害物となり、保磁力が増加する。Ni3Fe, Fe3Alなどの規則合金では超転位間の逆位相境界における原子対が誘導磁気異方性を発生させる。転位の歪みの場及び超転位の逆位相境界は磁気異方性を発生させると共に、飽和漸近領域での磁化率を増加させる。磁気塑性効果では磁壁の周期的な運動が転位の運動を助け応力−歪み曲線に顕著な変化を及ぼす。これらの現象は磁性の基本的な量である磁気モーメントの大きさやCurie 温度の変化を伴わない。本章では塑性変形が磁性の基本的な量、磁気モーメント、さらには交換相互作用に及ぼす影響を取り扱う。例えば Pt3Fe 規則合金は反強磁性を示すが、塑性変形により強磁性に磁気遷移する。この現象は1959年Crangelによって発見された[1]。この他にも強磁性から反強磁性への磁気遷移、常磁性から強磁性への磁気遷移、強磁性から常磁性への磁気遷移などが発見された[2][3][4]。この塑性変形に伴う磁気遷移は転位と密接に関係する。また、合金系の磁性の根本的原理と深く関係する。