フィリピン・パラワン島の猿マラリアと媒介蚊
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概要
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本研究は文部省科学研究費補助金海外学術調査費(代表者中林敏夫)によるフィリピンでのマラリアの調査研究の一環として行われたものであって,1971年1月および1971年12月から翌年1月までの2回の野外調査の結果をまとめたものである.今迄フィリピンの猿マラリアについてはPlasmodium inui, P. cynomolgi, P. knowlesiおよびP. coatneyiの4種が分布するものと云われているが,そのほとんど全部が外国においてフィリピンから送られたカニクイザルからのマラリア原虫の検出と分離を報告したもので,フィリピン国内における調査は簡単な報告が1つあるにすぎない.従って,フィリピン国内で行われた調査研究に関する詳細な報告としてはこれが最初のものである.パラワン島イワヒグ地区のモンテブレ支所付近で厚層および薄層血液標本を作成することのできたカニクイザルは総計20頭で,そのうちの11頭がマラリア原虫を血液中に持っていた(陽性率55%).これは今迄知られていた記録よりもかなり大きな値である.マラリア原虫としては各種の原虫種の単独感染や混合感染が認められた.またフィリピンの猿マラリアの媒介蚊については今迄全く報告がなかったが,カニクイザル,ヒト,水牛などを囮に用いた誘引採集や,マラリア感染陽性のカニクイザルにおける蚊の実験感染などの結果から,パラワン島ではAnopheles balabacensisが最も重要な猿マラリアの媒介者であることを示した.この蚊は他の東南アジアの諸国では人間のマラリアの媒介者でもあるので,最近でも世界的に猿マラリアの人体感染例が知られていることに関連して,フィリピンの猿マラリアについての問題点についても論議した."Preliminary surveys on simian malaria were tried in January 1971 and December 1971-January 1972 during the period of investigations on human malaria in Palawan Island, the philippines. Out of 20 long-tailed macaques examined, 11 were infected with malaria parasites each of which closely resembled Plasmodium cynomolgi, P. inui, P. knowlesi andor P. coatneyi. This infection rate (55%) is much higher than those previously known (8.6%-18.3%) in the Philippine monkey. The evidence that the most important vector of simian malaria in Palawan is Anopheles balabacensis has been confirmed by results of mosquito collection by monkey-bait net trap and experimental infections of A. balabacensis females which were fed on a malaria positive monkey. Importance of further studies on simian malaria in the Philippines was also discussed.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1978-03-30
著者
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