オホーツク沿岸海跡湖能取湖における一次生産特性─サイズ別クロロフィルaと溶存態無機窒素の動態─
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概要
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オホーツク海と湖口部でつながり,潮汐変動により湖水交換が行われる能取湖にて2007-2009年,一次生産の特性を把握することを目的に調査研究を実施し,サイズ別クロロフィルaと溶存態無機窒素に着目し検討した。本研究の結果,能取湖のクロロフィルaは,基本的には10m以上の大型の画分により構成され,特に春季の底層で高い値を示した。しかし,春季に高濃度のクロロフィルaが観測された後(5,6月)や冬季には小型の画分のクロロフィルa濃度が高くなる現象もみられた。溶存態無機窒素は,調査期間中,アンモニア態窒素が優占し,特に成層期の底層で高濃度に分布していた。このことは,能取湖はアンモニア態窒素が硝酸態窒素へと酸化される前に植物プランクトンが利用する環境にあることが推察された。一方,冬季には外海水の影響と推察される硝酸態窒素が優占する現象も確認された。これらの変動は,湖口でつながるオホーツク海から流入する外海水の勢力による変動,気象の変化にともなう表面加熱・表面冷却による水柱の成層と対流による変動,そして半閉鎖的環境による集積効果,これらが複雑に組み合わされることによりもたらされていることが示唆された。
- 2014-06-25
著者
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西野 康人
東京農業大学 生物産業学部
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塩本 明弘
東京農業大学生物産業学部
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塩本 明弘
東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科
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佐藤 智希
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所
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谷口 旭
三洋テクノマリン株式会社
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谷口 旭
三洋テクノマリン
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