北陸地方の土壌型を異にする森林土壌における硫酸イオンの断面分布と現存量
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概要
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越境大気汚染による硫黄負荷が懸念される北陸地方の土壌型を異にする森林土壌について,硫酸イオンと化学性などの分析を行い,硫酸イオンの断面分布と現存量の特徴を明らかにするとともに,それを決定する要因について考察した。その結果,硫酸イオンの断面分布は,同じ土壌型であれば類似し,選択可溶性Al,Fe量や有機物量などの各土壌型の性質を反映していた。各層の深さに対する加重平均値としての現存量は,赤黄色土で16.4mmol kg^<-1>と最も高く,次いでアロフェン質黒ぼく土と黄褐色森林土で9.4〜14.5mmol kg^<-1>となり,埋没腐植質非アロフェン質黒ぼく土,普通褐色森林土およびポドゾル性土では1.6〜5.8mmol kg^<-1>と低い値となった。硫酸イオンの吸着母体としては,黒ぼく土では(Al_o-Al_p)および(Fe_o-Fe_p),その他の土壌では(Al_d-Al_p)および(Fe_d-Fe_p)の寄与が大きいものと考えられ,これらの(Al+Fe)量と,新たなパラメータであるS-retention(付加的硫酸イオン吸着量)との間には極めて高い正の相関が認められた。一方,これらの(Al+Fe)量と硫酸イオンの現存量との間には,土壌の生成年代によって異なる関係が認められ,古い土壌ほど硫酸イオンを蓄積している傾向が示された。以上のことから,硫酸イオンの現存量は,その土壌の吸着能(吸着母体量)や現在の硫黄沈着量だけでは決定されず,土壌生成の時間も重要な要因であることが明らかとなった。
- 日本ペドロジー学会の論文
- 2013-06-30
著者
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