ジョルジュ・オーリックの音楽による映画《ローマ人の休日》における「皇帝ティトゥスの慈悲」 : 擬装された国歌
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概要
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映画音楽に貢献した自由主義者として知られるフランス6人組のジョルジュ・オーリックは、音楽によって映画の「エピソードをより的確に際立たせる」と評されている。ウィリアム・ワイラー監督の《ローマ人の休日(Roman Holiday)》において、映画が伝えるメッセージ、構成、場面、登場人物との関わりを注意深く考察するなら、確かに、彼の音楽は、古い国から来た王女が歴史的な軋轢の和解、友好と感謝のためにヨーロッパ各国を歴訪していることを伝えるエピソードを際立たせるように配慮されていることがわかる。そして、王女の音楽動機に用いられている16世紀の『マントヴァのバッロ』の旋律が、このヒロインは1953年のローマに戻って来た古代ユダヤ王族のベレニケであり、2000年の昔に滅亡した国からローマに連れて来られた彼女こそ、皇帝ティトゥスによって征服された国の民にとっての「望み」であることを物語っている。
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