日本語における連濁の原理 : 音楽の拍節理論による日本語アーティキュレーションの音韻論的考察
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概要
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日本語の複合語において後部成素の語頭が濁る連濁は、フランス・バロック音楽の「ムーヴマン」の概念を援用すれば、その現象を統一原理で包括的に説明できる。2モーラを1拍とする拍節リズムに支配される日本語は、モーラの結合のあり方によって、拍頭から始まって拍内で減速する「負のムーヴマン」か、拍内で加速し拍を跨いで解決される「正のムーヴマン」のどちらかが選択される。拍前で切れるアーティキュレーションである前者は拍頭と拍尾の音の関係が拍内で「急緩」の「短長」、後者は「緩急」の「長短」になる不均等なイネガール音符となる。「負のムーヴマン」においてはその拍頭に、「正のムーヴマン」では濁音に先行する拍裏に後部成素の語頭が来るとき、その音は非連濁になる。ムーヴマンの「正負」の選択は、複合語の音韻条件によってなされるが、その条件が中立的な場合は、語の意味や脈絡によるアーティキュレーションで決まる。
- 2012-00-00
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