ヒメボタル幼虫の空間分布と活動性に影響を与える環境要因 : 高い土壌水分量による活性化
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概要
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陸生ホタルの一種であるヒメボタル幼虫の空間分布と活動性に影響する環境要因を調べるため、千葉県鴨川市内浦のスギ社寺林においてベイトトラップによる調査を行った。空間分布は、林床に設けた35m×50mの調査区内に間隔を変えて(5m、50cm)トラップを配置して調べた。まず、全調査期間の累積捕獲数から、複数の空間スケール(5m、1m、50cm)における分布の集中度を推定した。次に、この累積捕獲数を応答変数とし、捕獲場所の環境要因(地温、土壌水分量、下層植生の被度、日射量)を説明変数とする一般化線形モデル、一般化線形混合モデルを空間スケール別に構築し、モデル選択によって幼虫の空間分布に影響を及ぼす環境要因を解析した。幼虫は5mスケールでは集中分布を示し、累積捕獲数に対して地温と被度が統計的に有意に正の影響を示した。1mスケールではランダム分布を示し、日射量が統計的に有意に負の影響を示した。一方、50cmスケールでは集中分布を示したが、統計的に有意に関係している環境要因は検出されなかった。活動性は、同じ調査区において5m間隔でトラップを配置した各調査日の総捕獲数を応答変数とし、環境条件(地温、土壌水分量、前日降雨の有無)を説明変数、調査期間をランダム要因とする一般化線形混合モデルを構築し、モデル選択によって影響する環境要因を解析した。幼虫の捕獲数に対し、土壌水分量が有意に正の影響を示した。また、調査期間のランダム効果は、産卵期直後に当たる期間(7〜8月)から蛹化前の期間(5月)へと増加する傾向を示した。以上の結果から、5mスケールにおいて、幼虫の選好する環境の存在はモザイク的で、分布様式は集中分布となるため、環境の改変がなされる際には、本種の空間分布を把握しておかなければ個体群の個体数を大きく損ないかねないと推測した。また、分布の効率的な把握には、散水などで人工的に幼虫の活動性を高めた上で、ベイトトラップによる調査を行うことが有効となる可能性が示唆された。
- 2013-05-30
著者
-
倉西 良一
千葉県立中央博物館
-
鎌田 直人
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
鎌田 直人
東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻
-
梯 公平
東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻
-
梯 公平
東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻:東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林教育研究センター
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