名声と流刑 -- オウィディウスの『トリスティア』とミルトン
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概要
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ミルトンに対するオウィディウスの『転身物語』の影響関係に関する研究は多いが、『トリスティア』がミルトンに与えた深い影響には十分な注意が向けられていない。 本論では、セント・ポール・スクールの第3学年という幼い日に、エレジー習得のテキストとして『トリスティア』に出会って以来、ミルトンはその言語と主題を生涯脳裏に刻みつけたことを検証する。エレジー制作を愛した若き日のミルトンは言語面の模倣に力を注ぎ、流刑に基づく主題の方は揶揄気味と言える。しかし、失明という不慮の悲劇は地理的流刑と共通する「光からの流刑」と言え、オウィディウスの「すべてを喪った」を痛みをもって実感する。 名声の***で流刑されたオウィディウスは公の讃美や名声の虚しさを説き、隠れた人目につかない私的生き方を勧める。ミルトンの詩における反映をたどると、最後の3大詩の制作順序も明らかになる。『闘技者サムソン』のサムソンは名声や公の賞賛を優先し、『失楽園』のサタンはオウィディウスの勧めの対極にあり、『復楽園』のキリストは人目を避けた目立たない私生活にあって、サタンと名声論争を交わす。
- 2012-00-00
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