歴史を大観する学習の単元構成論 : 日本と英国の事例分析を手がかりにして
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概要
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本研究の目的は,内外の歴史教育で課題とされる大観学習の方法と実践的課題を考察することである。そのための方法として,日本の中学校歴史的分野と英国のKS3の歴史を大観する学習の事例研究を行い,それを手がかりに単元構成のレベルで大観学習の原理と方法を明らかにすることにした。カリキュラム上の位置づけについては日本の学習指導要領と英国のナショナルカリキュラムを,内容構成についてはそれぞれの国の代表的な歴史教科書を,学習展開については分析対象とした歴史教科書に基づく学習事例をそれぞれ分析した。分析の結果,日本の大観学習の特色は時代の要約ないし概括にあり,英国の大観学習の特色は時代を超えた歴史の見方やテーマの理解にあることが判明した。それを踏まえて,歴史を大観する学習のための単元構成の要件を次の4つに整理した。a)歴史の大観を時代の要約・概括に留めず,歴史の見方や考え方へと拡大して捉える。b)大観の時間的枠組みは既成の時代区分に囚われず自由に設定する。大観すべき内容こそが単元をなす。c)大観学習の要点は歴史の大観につながる問いの設定にある。d)大観のための基本的学習過程は,(1)最初の大観的活動と課題意識,(2)問いの発見と仮説形成,(3)大観と関連させた探究,(4)結論を導く作業,となる。以上の要件を踏まえて,「中世の幕開け」と題する単元モデルを開発した。
- 2013-03-31
著者
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