環境条件に応じた葉寿命の種内変異 : 一般的傾向と機能型間の差異(<特集1>なぜいま葉寿命なのか?)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
植物の種によって葉寿命が多様であることは古くから注目されてきた。近年では、種の機能型によって葉寿命が異なることや、葉寿命は様々な葉の形質と強い関連性を持つことが明らかにされている。これらの多くの研究では種間差に着目し、1種につき1つの葉寿命の値を比較している。しかし、一般に葉寿命には種内変異があり、光環境や土壌の栄養塩可給性などの環境条件によって葉寿命は変化する。もし種内変異の方向や大きさが種によって異なっていれば、種間比較で見られた傾向は環境条件に応じて変化するかもしれない。種内変異の方向や大きさは、その種の生存・成長戦略と捉えることができ、生育環境の多様性と関連する可能性がある。このため、植物の環境応答の種内変異について、様々な種を通して見られる一般的な傾向やその種間差を整理することは重要である。本論文では文献調査により、環境条件に応じた葉寿命の種内変異の一般的な傾向およびその機能型間の違いの比較を行った。環境要因として、光、土壌栄養塩、土壌乾燥、大気CO_2濃度、標高・緯度を対象とした。その結果、葉寿命の種内変異のパターンは環境条件によって多様であり、葉寿命の種内変異の傾向が非常に明瞭なもの(光環境に応じた変異)から不明瞭なもの(土壌乾燥や大気CO_2濃度に応じた変異)まで存在していた。また、機能型によって応答の大きさ(光、土壌乾燥)や方向(標高・緯度)に違いがみられることが明らかになった。このような種内変異のパターンや機能型による違いを整理することは、様々な植物種の環境応答を予測するうえで役立つであろう。
- 2013-03-30
著者
-
小野 清美
北海道大学低温科学研究所
-
及川 真平
東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科
-
長田 典之
京都大学フィールド科学教育研究センター
-
宮田 理恵
北海道大学大学院地球環境科学研究院
-
神山 千穂
東北大学大学院生命科学研究科
-
永野 聡一郎
東北大学大学院生命科学研究科
-
塩寺 さとみ
北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター
-
田畑 あずさ
北海道大学低温科学研究所
-
小野 清美
北海道大学 低温科学研究所
関連論文
- P-22 QTL解析を用いたイネの機能地図による光合成、物質生産に関する形質の遺伝学的解析
- ゲノム解析研究と作物研究の接点(第205回講演会ワークショップ要旨)
- QTL解析法を用いたイネの機能地図の作成とその利用
- P-31 作物生理研究とキャンディデートストラテジーの融合によるイネの草丈関連遺伝子の単離
- 45 トウモロコシショ糖リン酸合成酵素(SPS)遺伝子を導入した形質転換体イネにおけるSPS活性の変化が乾物重及び収量構成要素に及ぼす影響
- 植物におけるショ糖合成のキーエンザイム,ショ糖リン酸合成酵素の機能と制御
- 葉寿命研究のこれから : まとめと今後の展望(なぜいま葉寿命なのか?)
- 葉の枯死と個体の炭素収支(なぜいま葉寿命なのか?)
- 葉寿命研究の歴史と近況(企画趣旨,なぜいま葉寿命なのか?)
- 環境条件に応じた葉寿命の種内変異 : 一般的傾向と機能型間の差異(なぜいま葉寿命なのか?)
- 熱帯林における樹木のリーフフェノロジーと環境要因 : 水分環境と樹木の機能的多様性(なぜいま葉寿命なのか?)
- 葉の老化に影響を与える環境要因と葉の老化の制御機構(なぜいま葉寿命なのか?)
- 中部カリマンタン地域における森林タイプの分類と特徴(会員研究発表論文)
- 環境条件に応じた葉寿命の種内変異 : 一般的傾向と機能型間の差異
- 熱帯林における樹木のリーフフェノロジーと環境要因 : 水分環境と樹木の機能的多様性
- 葉寿命研究の歴史と近況