熱帯林における樹木のリーフフェノロジーと環境要因 : 水分環境と樹木の機能的多様性(<特集1>なぜいま葉寿命なのか?)
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概要
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熱帯域では、気温の季節変化が少ない一方、地域によっては降水量の季節変化が明瞭であるため、乾燥や浸水、土壌の湿度、大気と葉の内部との水蒸気濃度の差といった水にかかわる様々な要因が、複合的に植物の展葉・落葉パターン(以下、これらをまとめてリーフフェノロジーと呼ぶ)に作用すると考えられている。赤道からの距離が離れるにしたがって年間降水量は徐々に減少し、乾季は長く厳しいものとなる。このため、熱帯域の高緯度地帯においては、植物の生育環境における水ストレスの強さが植物の生死を左右するといえる。樹木にとっては、水ストレスを回避しつつ、リーフフェノロジー(ひいては葉寿命)を調節して効率的に光合成を行うというシステムが必要不可欠である。熱帯多雨林のような湿潤環境においては、リーフフェノロジーの季節性は不明瞭になるが、日射量の変化がリーフフェノロジーに影響を与える場合もある。浸水林や河口域・内湾の海岸線に見られるマングローブ林では、浸水や海水の塩分濃度、温度などとリーフフェノロジーとの関連性が顕著である。樹木はこれらの様々な環境ストレスを回避、または克服する戦略を持っており、乾燥や浸水により樹体内が水分欠乏に陥るのを防いでいる。落葉することによって樹体内の水分欠乏を回避する種もあれば、一方で、深い根、密度の低い材や根塊を持つことによって、葉をつけたまま厳しい環境を克服することを可能にしている種もみられる。このように、リーフフェノロジーに影響を与える環境要因とそれに対応した樹木の機能的多様性との組み合わせが、この地域でみられる様々なタイプのリーフフェノロジーや葉寿命の存在を可能にしていると考えられる。
- 2013-03-30
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