筋萎縮性側索硬化症に対する治療法の開発
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概要
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経・筋疾患のなかでも治療法が極めて乏しく全身の筋萎縮が進行する過酷な疾患であり,神経難病の象徴的疾患とされている.ALSは神経疾患のなかで最も過酷な疾患とされ,現在治療薬として唯一認可されているリルゾール(リルテック)の効果も限局的であるため,早期に病因の解明と有効な治療法の確立が求められている.家族性ALSにおいてはSOD1やFUS/TLSなどの原因遺伝子が報告され,病態の解明やモデル動物の作成が進められている.わが国では,現在,いずれも我が国の研究者によって開発されたエダラボンおよび大量メチルコバラミンによる治験が行われている.東北大学神経内科ではALSに対する再生医療の開発のために世界に先駆けて大型のALS動物モデルであるトランスジェニックALSラットの開発に成功し,薬剤の髄腔内投与が可能なモデルとして注目されている.肝細胞増殖因子(HGF)は日本で発見された神経栄養因子であり,運動ニューロンに対する強力な保護作用が知られている.私たちはALSラットモデルに対してリコンビナントHGF蛋白の髄腔内持続投与を行うことにより,明確な治療効果を臨床的かつ病理学的にも確認した.リコンビナントHGF蛋白の髄腔内持続投与がALSの発症期からの投与であっても約63%の罹病期間の延長効果があり,この効果はこれまでに報告されたモデル動物に対する治療実験の中でも最も良い成績である.HGFはわが国発のALS治療薬候補としてスーパー特区(中枢神経の再生医療のための先端医療開発特区:代表 岡野栄之)にも選定された.これまでに臨床試験のために霊長類であるマーモセットを用いてHGFの髄腔内投与による副作用を検証すると共に臨床用量の設定を行った.同時にGLP基準でカニクイザルに髄腔内持続投与を行い,安全性(毒性)および薬物動態を確認している.ヒトリコンビナントHGF蛋白によるALS治療は医薬品機構との事前面談が終了し,平成23年度にフェーズ1の治験を開始する方向で準備を進めている.
- 2011-04-00
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