『徒然草拾穂抄』の注釈態度 - 近世前期の徒然草注釈書を展望しながら -
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概要
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北村季吟(一六二四〜一七〇五)は、生涯に二つの徒然草に関する注釈書を著した。四十四歳の時に刊行した『徒然草文段抄』(一六六七年)は、その後、広く流布した。これは徒然草に関して書かれた膨大な注釈書群の中でも、定番的な地位にあり、近代以後にあっては、欧米の日本学者たちが徒然草を外国語に翻訳する際にも、参照されている。一方、季吟が八十一歳の時に、五代将軍・徳川綱吉に献上した『徒然草拾穂抄』(一七〇四年)は、『徒然草文段抄』の詳細な注釈を、わかりやすく簡略化して、そのエッセンスをすっきりとまとめている。 本稿では、まず、近世前期の徒然草注釈書の中に、『徒然草文段抄』の特徴と個性を明確化する。そのうえで、北村季吟が晩年に到達した徒然草観、ひいては、古典の注釈書のあり方の一端を、『徒然草拾穂抄』の注釈態度の中から見出すことを試みた。 なお、各種の徒然草注釈書における注釈内容を具体的に比較するにあたって、本稿ではひとまず、徒然草の第二十段までを対象とする。その際に、諸注釈書が指摘する徒然草と和歌・物語との関わりに絞って考察した。
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