久万林業地の展開と地域製材業 : 森林組合事業の果たした役割
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概要
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製材工場および原木市場,製品市場,森林組合への聞き取り調査結果および既存研究,統計資料をもとに,愛媛県久万林業地の展開過程と久万産材を加工する地域製材業の変遷を整理するとともに,森林組合の活動が久万林業地の展開に及ぼした影響について検討した。久万地域の林家の多くは中小規模の農家林家であるが,優良材生産に向けて他の一般的な林業地に比べて枝打ちに象徴されるより集約的な施業を行ってきた。多くの林家が自家労働力によって間伐および搬出を含めた保育作業を行い,森林組合がこうした活動をサポートしてきた。森林組合は補助金を活用して林道および作業道を開設し,林家の自伐を促進してきた。また,原木市場を開設して安定的な素材の流通経路を確保するとともに,製材工場を開設して新たな久万産材加工の担い手を生み出した。こうした取り組みにより,地域の素材価格水準が周辺地域に比べて高く維持され,素材生産量が増加した。しかし,その一方で久万産材加工の重要な担い手となってきた地域民間製材工場の活力が,補助金によって低価格で資本を装備しえた森林組合工場との素材獲得競争の中で低下し,新たな経営展開をなしえていない工場が多くみられる。
- 応用森林学会の論文
- 2000-03-20
著者
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