森林の生活環境価値の計測 : ヘドニック法の適用
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概要
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本論文では,ヘドニック法を用いて森林の生活環境価値を計測した。宅地価格に注目したヘドニック式の勾配ベクトルは,ある条件の下で,人々の生活環境特性に対する限界支払意志額として解釈できる。したがって森林に関するその値は,森林の生活環境価値を表す。計測には,二次形式のヘドニック式を用いた。得られたヘドニック式は,期待された符号条件をほぼ満たした。この推定式を用いて,実際にある地域の森林の生活環境価値を推定した。結果として,森林の生活環境価値は,木材生産に基づく評価額よりもはるかに大きい一方で,森林が宅地に転用されるときの評価額とはあまり変わらない。本論文はまた,ヘドニック法の問題点も指摘した。引っ越しに要する費用が存在すると,ヘドニック価格(競争均衡価格)の非決定性が生じることを示した。また,人々の将来に対する予想が通常の推定では考慮されていないことも指摘した。結論として,ヘドニック法の利用に際して,得られた結果の解釈とその利用は,慎重にされねばならない。
- 森林計画学会の論文
- 1995-09-30
著者
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