サケ稚魚の生活環境としての根室湾の海洋構造評価(シンポジウム:北海道オホーツク海沿岸域と道東汽水湖群の海洋構造と生物生産過程)
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概要
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根室湾では,湾内の海洋環境の把握や,周辺河川からのサケ稚魚放流時期の改善を目的として,2007年から2009年にかけて海洋環境調査観測が行われた.表層水温について,サケ(Oncorhynchus keta)稚魚の生活環境として適水温とされる温度帯は8〜13℃であるが,沿岸域が8℃に達した時期は2007年と2009年は5月下旬,2008年は6月上旬であった.また13℃を超えるまでの期間はそれぞれ3旬,4旬,5旬と,当該3年間では2009年が最も長かった.根室湾に流入する河川の水温が気温と時期をほぼ同じくして変動するのに対し,沿岸域の水温は遅れて推移するため,河川と沿岸域との間で水温差が最大で9℃以上に達していた.一方,表層塩分は沿岸域で塩分31未満となるが,その低塩分水の広がり方は年によって異なるうえ,河川流量以外の要因によって変動することが示唆された.数値モデルを用いて流れ場を再現した結果,低塩分水の分布は風に強く依存していることが分かった.サケ稚魚を模した粒子追跡数値実験により沿岸域のサケ稚魚分布を再現できたことから,サケ稚魚は海洋の流れに乗って受動的に移動している可能性が高いことが示された.根室湾のようにサケ稚魚が降海して間もない海域では,塩分分布によって餌生物の種組成が変わるうえ,循環場によって稚魚の移動経路が左右される可能性があることから,表層水温と併せて表層塩分および循環場も考慮すべきであることが示唆された.
- 2011-08-31
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