根室海峡における春季および秋季の水質変化過程
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概要
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根室海峡は,オホーツク海-太平洋間の海水交換の場の一つと考えられているが,海峡内における水質変化について全体像が把握された例は非常に少ない。本研究では,歴史的データおよび最近の観測データを用いて,春季・秋季の水温・塩分の水平平均場および鉛直分布などを示し,根室海峡西岸域における水質分布の季節変化の要因について議論した。野付半島を境界として,海峡北部はオホーツク海沿岸域を流れる宗谷暖流水の季節変動を反映した水質分布を示す一方で,河川水の混合やオホーツク海中層水の湧昇が表層の水質分布に変化をもたらすことが分かった。その一方で海峡南部は,春季は根室湾内の水と沖合との間で根室湾口に顕著な塩分フロントが形成され,秋季は北部より宗谷暖流水の影響が小さく低塩分となることが明らかになった。また,酸素の安定同位体存在比δ^<18>Oと塩分の関係式を用いて,春季の海面付近の水質変化に対する河川水の寄与についても調べた。その結果,海面付近の表層に海峡北部で0.50-0.95%,野付半島沖および海峡南部で1.47-3.25%混入していることが分かった。オホーツク海と太平洋を結ぶと考えられてきた根室海峡において,少なくとも海峡西岸域では,北部と南部,そして表層・亜表層とで水質が複雑に変化し,河川水によっても変質を受けていることが示唆された。
- 2007-09-05
著者
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小熊 幸子
日本学術振興会
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川崎 康寛
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所
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東屋 知範
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所
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小熊 幸子
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所
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東屋 知範
北海道区水産研究所
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