中国における日系中小企業の人材マネジメント : コア人材の育成と確保を中心に
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概要
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中国へ進出している日本企業の多くは人材マネジメント(HRM)の問題に直面しており、現地市場を熟知し高度なマネジメント能力を持つコア人材の育成と確保は、競争優位を高める際の重要な課題である。多くの日本企業では、人材の内部育成・内部調達をはじめとする日本的なHRMを行い続けている。中でも、社内労働市場によるコア人材の長期内部育成を行うことは広く知られている。対して、中国の労働市場は人材の流動性が高いため、内部育成によるコア人材の確保は難しく、高度な知識を持つ人材を外部調達で確保していることが指摘されている。本稿では、中国において、内部育成によるコア人材の確保を行っている日系中小企業の事例を取り上げ、そのコア人材の育成と確保のメカニズムを明らかにする。この日系企業では、内部育成によるコア人材の確保という日本的なHRMを、離職率が高い中国でも機能させている。人材の流動性が高い状況においても、社内教育に継続した投資を行い、中国に適合した教育システムを開発し、教育された優秀な人材が組織に残るような人材保持制度を創り上げることによって、内部育成によるコア人材の確保を実現可能にしている。特に、育成した人材を確保するためには、信頼関係に基づく心理的契約を構築する努力が重要である。今後、生産の海外移転が加速する中で、経営理念や事業方針を現地の状況に応じた形で浸透させるためには、その架け橋となる現地人コア人材の重要性が高まるだろう。中国において人材の育成と確保を行うためには、日本的なHRMの仕組みや人事制度を現地に適応させることが考えられる。
- 2012-04-30
著者
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