落葉広葉樹林皆伐後の初期遷移における林分構造の変化
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概要
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1. 落葉広葉樹林皆伐後の初期遷移パターンを明らかにした.樹高1.3m以上の全幹について,胸高直径(DBH)と樹高(H)を測定し,林分構造,種組成,主要構成種の動態(成長速度,枯死,加入)を皆伐後の7年目春(2005年5月)から10年目秋(2008年11月)にかけて追跡調査を行なった. 2. 皆伐後の群落構造は7年目春から10年目秋にかけ群落高が3.8mから5.4m,胸高断面積面積(BA)が3.5m^2ha^<-1>から10.2m^2ha^<-1>, 200m^2あたりの幹数密度が814本から966本へと大きく増加した.一方,種数や多様度指数H'は大きな変化が見られなかった. 3. BAに基づく優占度は,皆伐後7年目において亜高木種のウワミズザクラ,低木種のノリウツギが高く,次いで高木種のダケカンバ,低木種のクロモジであった.種子散布により侵入したウワミズザクラと伐り株萌芽更新のノリウツギが高密度で出現することで優占群落を作っていた. 4. ダケカンバは,調査期間中に優占度が高くなり, 10年目秋の樹高階分布ではダケカンバの優勢木が上層へ抜け,低木種や亜高木種に比べて個体サイズが大きくなっていた.一方,ノリウツギの優占度は低くなっていた. 5. 皆伐直後に同時に発生したと考えられる各生活形の種は, 7年目春はどれもほぼ同じ個体サイズであった.このことから伐採後から7年目まではどの種も同じ速度で成長してきたと考えられた.しかし, 7年目から10年目にかけて相対成長速度は優占度上位4種中ダケカンバが有意に高く,ノリウツギが低かった.ノリウツギは枯死率も高かった. 6. 皆伐後初期はどの種も同じ速度で成長するため, BAに基づくと種子や伐り株萌芽から高い幹数密度で出現した低木種や亜高木種が優占していた.しかし,林冠が混み合ってくると成長速度に種間差ができ,成長速度の高い高木種へ優占種の移り変わりがみられた.
- 2012-06-25
著者
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小泉 博
早稲田大学大学院先進理工学研究科
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八代 裕一郎
岐阜大学流域圏科学研究センター
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大塚 俊之
岐阜大学流域圏科学研究センター
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志津 庸子
岐阜大学流域圏科学研究センター
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曽出 信宏
岐阜大学流域圏科学研究センター
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小泉 博
早稲田大学教育・総合科学学術院
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志津 庸子
(現)岐阜大学流域圏科学研究センター
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志津 庸子
岐阜大学 流域圏科学研究センター
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曽出 信宏
岐阜大学 流域圏科学研究センター
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八代 裕一郎
岐阜大学 流域圏科学研究センター
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大塚 俊之
岐阜大学 流域圏科学研究センター
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小泉 博
早稲田大学 教育・総合科学学術院
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