九州に分布するテフラ由来土壌の硬化特性 : (1) 阿蘇火山西方に分布する「ニガ土」の断面形態,一般的理化学性および鉱物学的特性
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概要
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阿蘇火山西方の台地に分布し,乾燥に伴い著しく収縮して硬い土塊となる埋没火山灰土壌(ニガ土)の諸性質を解明するために,ニガ土の代表露頭(菊池郡大津町高尾野)において断面調査および物理性(粒径分析,三相分析,水分特性曲線),化学性(pH, Y_1,全炭素,全窒素, CEC ,交換性塩基,リン酸吸収係数) , 全分析,一次鉱物,粘土鉱物(X線回折,選択溶解試験)の分析を行った。1)断面は黒色〜黒褐色と暗褐色〜褐色の14の層が互層をなす累積性の黒ボク土で,第4層以下がニガ土の性質を持っていた。これらの層序は,土壌断面調査だけではなく一次鉱物組成も検討して決定する必要があった。土壌の構造は亜角塊中〜大,砕易性は砕易〜堅硬,粘着性および可塑性は弱であった。2)ニガ土の硬度(mm)は生土の状態では25以下であったが,水分の減少に伴い比例的に硬度は増大し,風乾の状態では一部の層を除き31以上になった。3)ニガ土の理化学性は,粒径組成がHCないしLiC(砂含量(%)は2〜32,粘土含量(%)は35〜69), 仮比重(Mgm^<-3>)は0.4ないし0.5, pH(H_2O)は5.5ないし5.9, CEC(cmol(+)kg^<-1)>)は 20〜49 ,交換性塩基(cmol(+)kg^<-1>)はCaが2〜6, Mg,K,Naが2以下,リン酸吸収係数(gP_2O_5kg^<-1>)は22.8 以上と,わが国の火山灰土壌に一般的に見られる値であった。全炭素(%)は3.0〜11.7 で,褐色の層でも3%以上の炭素を含んでいた。水分保持能は3kPaでの含水比が138〜186%, 1.5MPaでの含水比が111〜159%であった。4) 一次鉱物組成は,重鉱物は両輝石と強磁性鉱物を,軽鉱物は無色火山ガラスと斜長石を主体とした。第2層はアカホヤ,上部ゴマニガはAT,下部ゴマニガは草千里ヶ浜軽石と同定できた。一次鉱物組成と全分析の結果を比較すると,無色火山ガラスの量および形態やカンラン石の量がケイ酸含量と良く対応していた。粘土鉱物はアロフェン・イモゴライト,フェリハイドライト,腐植-アルミニウム・鉄複合体を主体としていた。5) ニガ土の断面形態,物理性,化学性,粘土鉱物組成,母材の岩質および一次鉱物組成を日本の他の地域の黒ボク土と比較すると,水分保持能でニガ土が他の地域の黒ボク土より高いこと以外は,顕著な相違は認められなかった。6) 各層の年代は一次鉱物分析による鍵テフラの同定と,近くの露頭で測定された^<14>C年代の利用により推定でき,ニガ土の性質を持つ層の年代は1万年〜3万年であった。3万年前から現代まで黒ボク土の生成が連続していることは,他の地域にはほとんど見られない本断面の特徴である。
- 日本ペドロジー学会の論文
- 1995-12-31
著者
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