フィリピンにおける企業支配構造と企業統治問題─財閥制度の検討を中心に─
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では,フィリピンにおける財閥による企業支配構造の特色及びそれに関連した企業統治問題を俎上に載せ,検討した。フィリピンの財閥は,第二次世界大戦後のフィリピン独立以降,コングロマリット化しながら規模拡大をしてきた。フィリピンで財閥が存続し,強大な権力を有している背景には,独占禁止政策の不備がある。財閥による企業支配構造は,非公開持株会社を頂点に,公開持株会社→財閥事業会社というピラミッド構造になっている。その支配構造の特色として,(1)株式所有に基づく所有権支配,(2)財閥家族が持株会社及び事業会社の取締役会議長等を務める内部支配,(3)財閥内金融機関を利用した会社債権者としての支配をあげることができる。そして,それらは健全な企業経営や証券市場の形成を阻害している。そのため,フィリピンでは,アジア金融危機以降,企業統治制度の充実が図られてきた。しかし,2006年の世界銀行による「企業統治制度及び規則の遵守状況に関する評価報告(ROSC評価)」では,制度の改善が進んでいるものの,エンフォースメントの欠如が大きな問題として指摘された。経済・金融のグローバル化のなかで,フィリピンにおいても国際基準に適合した企業統治制度の構築が行われなければならない。そして,企業統治制度の充実による健全な企業経営や証券市場の構築は,株式会社制度が不平等社会形成の源泉となることを予防し,国民経済の成長・発展や経済社会の民主化・平等化を促進することにつながると思われる。
- 2012-06-15
著者
関連論文
- フィリピン会社法における会社の政治献金規制
- 地方企業の地域社会における役割に関する一考察-清酒製造業を事例にして-
- いわゆる原始一人会社に関する一考察-フィリピン会社法における発起人の員数および資格要件に関する規定を手がかりにして-
- フィリピンにおける企業支配構造と企業統治問題─財閥制度の検討を中心に─
- フィリピンにおける企業統治制度の概要と課題
- 清酒製造業における雇用構造の変化と生産効率性-関東甲信越地域における酒造要員賃金実態調査を手がかりにして-
- 組織と法人制度-現代企業の基本構造と特質-
- フィリピンにおける会社制度と計算書類公開制度
- 協同組合と組合員有限責任制度
- 水産加工業協同組合の組合員の有限責任--最高裁判所平成4.3.3第三小法廷判決
- 食品産業における循環的展開過程に関する研究--特に事業所数の変動について