フィリピンにおける企業統治制度の概要と課題
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概要
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現在,フィリピンでは,企業統治制度の整備が進められている。しかし,制度整備は進んでいるものの,2006年にフィリピンを対象に行われた世界銀行による「企業統治制度及び規則の遵守状況に関する評価報告(ROSC評価)」においては,十分な成果は上がっていなかった。特に,法制度に対するエンフォースメントの欠如が問題点として指摘された。その後,2009年に証券取引委員会(SEC)の改正企業統治規則,2010年には自主規制機関(SRO)であるフィリピン証券取引所(PSE)の企業統治ガイドラインが制定された。改正企業統治規則は,取締役会の適正な運営と少数株主保護に関する規定の充実を目指しており,企業統治ガイドラインは,従業員や地域社会に対する企業の社会的責任の実現を目指している。しかし,これらは法的強制力を備えた法律ではないため,エンフォースメントの面では従前通りの問題を残している。そのため,改正の遅れている会社法の整備が急がれなくてはならない。また,フィリピンを含む新興国においては,取締役会に対する監視・監督制度,企業内容開示制度,報告責任制度など企業統治の基本原則を遵守し,且つ新興国の経済的社会的状況に適合した企業統治制度の整備が行われる必要があるように思われる。
- 2012-06-15
著者
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