パノラマ : エウリピデス『フェニキアの女たち』考
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概要
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小論はエウリピデスの悲劇『フェニキアの女たち』の作品論である。本篇の上演年代は不明であるが、作者晩年のものと見なされている。古代から人気作品として知られているが、それが作品の完成度と必ずしも一致しない。劇は冒頭から最後に至るまでテバイ攻防戦を巡る各場面が連続してパノラマ的に展開するが、それらを繋ぐ統一的なテーマが見つからない。同時上演の他の作品との関連から、息子たちに対するオイディプスの呪いをそのテーマに擬する説もあるが、小論はそれを採らない。また劇の初めと終わりに登場するアンティゴネ像に人間的成長を認めて、それを本篇の意義と捉える説も採らない。論者は、本篇は互いに内的関係に乏しい、そして統一的テーマに欠ける各場面のパノラマ的展開の劇であり、その展開の妙こそが人気の源であったとする。
著者
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