リアリスト・エウリピデス : エウリピデス『嘆願する女たち』考
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概要
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本篇は、ギリシアの内戦ペロポネソス戦時下に書かれ上演された同工の作品『ヘラクレスの子ら』と同じく、嘆願劇というジャンルに分類される。 素材はアルゴスのテバイ攻めの後日譚であり、作者はそれをアルゴス側の戦死者の遺体収容という観点から捉え、収容を援助するアテナイ軍の旗揚げを義挙として、一篇全体をアテナイ讃歌に作り上げている。 加えてここにはより具体的な現実世界が反映されている。 前420年代全般のギリシア諸都市国家間の政治的力関係がそれである。 嘆願劇の常として、劇末で嘆願者のアルゴス側から報恩と感謝の念が述べられるが、作者はそこにわざわざアテナ女神をデウス・エクス・マキナとして登場させ、誓約の遵守を堅く言い渡させている。 エウリピデスはここでリアルな時代認識に裏打ちされた愛国詩人になっている、と言うべきだろう。
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