内視鏡外科手術における研究と治療の進歩(2)消化器外科領域 (1)上部消化管:胃癌
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概要
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1987年Mouretの胆嚢摘出術を嚆矢とする腹腔鏡下手術は周辺機器の進歩と相まって、他臓器に対しても急速に広がっている。胃における腹腔鏡下手術は胃粘膜下腫瘍に対する胃部分切除から始まり、現在、胃癌に対しても積極的に行われている。胃癌に対する胃切除術は主にESD:Endoscopic Submucosal Disseection対象外の早期胃癌を適応として行われている。その多くは腹腔鏡下に剥離とリンパ節郭清を行い、小開腹創から胃を引き出して幽門側胃切除(または幽門保存胃切除)、再建を行う腹腔鏡補助下幽門側胃切除(laparoscopy assisted distal gastrectomy:LADG)である。再建法は小開腹創からの手縫い、circular staplerによるものが多いが、体型に左右されないとの理由から腹腔内での再建も増えている。リンパ節郭清の程度、精度も当初こそ学会で批難を受けたが、経験を重ねるにつれ向上し、むしろ鏡視下の方が拡大視効果により精緻な郭清が可能とも言われるようになった。近年、噴門側胃切除、胃全摘術も行わるようになったが、食道空腸吻合の困難さから現状では一般的ではない。さらに適応を早期胃癌のみならず進行胃癌まで広げつつあり、胃癌手術に対する腹腔鏡下手術は急速に普及しつつある。しかしながら胃癌に対する腹腔鏡下胃切除と開腹胃切除の比較検討にはエビデンスの高い立証はなく2010年改訂の胃癌学会のガイドラインにおいても腹腔鏡下胃切除は臨床研究としての治療法の位置づけのままである。腹腔鏡下手術が胃癌に対する外科治療である以上、従来の開腹手術による安全性と根治性が劣ってはならず、また低浸襲治療の名のもとに、無制限に適応を拡大していってよいか十分な議論が必要である。
- 2012-04-25
著者
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