生物学的製剤を用いた分子標的治療の進歩(8)生物学的製剤による関節リウマチ治療の進歩
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概要
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関節リウマチはこれまでは関節炎による疼痛、慢性炎症により関節変形をきたし身体機能が障害され、合併症や内臓病変などのため生命予後も悪い疾患とされていた。根治的治療は確立されていないが、近年病態メカニズムに関与する因子を修飾することにより疾病の進行が抑制されることが明らかになり、分子標的治療が著しく進歩した。2003年にtumor necrosis factor(TNF)阻害薬であるinfliximabが承認され、現在ではetanercept、adarimumab、golimumab(以上TNF阻害薬)、tocilizumab(interleukin-6 (IL-6)阻害薬)、アバタセプト(T細胞選択的共刺激阻害薬)の6剤が使用可能となり、全国で約10万人近くがこれらの治療を受けていると推定される。, 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターは、リウマチ性疾患治療施設としては日本最大であり、全国で60-70万人といわれる関節リウマチ患者総数の1%にあたる約5,500例を診療している。当センターで組織したIORRAコホートに基づく研究により、現在13.2%の患者がこれら生物学的製剤で治療を受けており、コホート全体では疾患活動性(DAS28)は生物学的製剤導入時期前の3.72から2.96、身体機能障害度(J-HAQ)は0.814から0.655と著明な改善が日常診療下で得られたことが明らかとなった。また、生物学的製剤使用者においては実臨床でも、開始後速やかに疾患活動性が低下し身体機能障害度が改善することが明らかにされ、就労機会や生活の質、生命予後などの長期アウトカムの改善も得られつつある。,生物学的製剤でリウマチ診療のすべてが解決したわけではなく、また新たな問題も提起されている。しかし、このような治療の進歩により関節リウマチ診療において単に関節の痛みを取る短期的生活の質(QOL)の改善から就労や生命予後の改善など長期的QOLの改善を目指すよう治療のパラダイムシフトがもたらされた恩恵は大きい。
- 2012-04-25
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