中国のソブリン債務リスクの一瞥見
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年、中国における地方政府絡みの債務問題が深刻で、負債残高の国内総生産( GDP)比が2010年末時点で最高で35% にも達する。政府が進めている金融引き締めや住宅購入制限などの価格抑制策により、不動産が急落すれば、土地使用権譲渡収入への依存度が高い地方政府の債務返済が滞り、大量の融資を行っていた銀行の不良債権問題に発展しかねない。不動産投資は2010年のGDPの約13% 、固定資本形成全体の4分の1を占めているため、内外の観測筋・投資家の間では、中国経済の高度成長の行方に対する懸念も広がりつつある。中国は11年の世界全体の経済成長の40% 以上を担う見通しからすれば、同国のハードランディングのリスクについて人々が不安になるのも無理はないだろう。中国自身も諸外国での景気減速を感じており、当局は高成長を維持する能力について心配し始めている。また、08〜 09年の世界金融危機に対応するために、中国政府は国債増発等の手段によってインフラ投資等を拡大してきた。もし銀行や地方の救済が必要になった場合、それに伴う公的債務の急増により政府の負担能力は大丈夫かとの危惧の念をも呼び起こしている。このように、世界経済を牽引する中国の財政の持続可能性についてかつてない関心が集まっている。本稿では、「国家債務比率」という概念を用いてこの問題を検討してみる。
著者
関連論文
- 分税制と圧力型体制 -二重束縛下の中国農村財政-
- 「還暦」を迎えた中国における地方財政調整の新動向
- 中国のソブリン債務リスクの一瞥見
- 中国の経済成長減速と財政の持続可能性
- 欧米政府債務問題の長期化と中国の財政リスク
- 1994年分税制改革後の中国における共有税システム