「還暦」を迎えた中国における地方財政調整の新動向
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概要
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1949年に故毛沢東主席が社会主義中国を建国した時から、中興の祖の故?小平氏が改革開放に踏み切る1978年頃まで、中国の所得水準は発展途上国の中でも最左翼の部類に属していた。しかし、改革開放以降、中国経済は急速に発展し、一人当たりの名目所得はまだ低いものの、今や新興国の代表格に名乗りを上げ、米国の次の超大国候補の最右翼にまで喧伝されるようになっている。そうした中で、めでたく建国60周年、人間で言えば「還暦」を迎えた中国では、2008年秋の米国発の世界同時不況を機に、中央・地方間の財政調整が新たな展開を見せている。具体的には、09年前後から中央から地方への移転支出の規模が一層拡大し、パターンも多様化してきた。これには、大凡以下2つの背景が指摘できよう。第一は移転規模の拡大を可能にした財政側の変化である。中国では、税収は政府歳入の約9割を占める。近年の経済成長に加えて、減税を認めた特例措置の撤廃により、税収全体が順調に伸びてきた。よって、中央財政による裁量的支出の余地が広がりつつある。第二は移転支出増大を必要とする政治や経済の環境変化であり、中央政府が国家の統一、社会の安定を従来以上に重視せざるを得なくなっている。裏返して言えば、地域間の経済格差、貧富の格差などといった格差問題の解決がいよいよ焦眉の急になってきたのである。こうした状況を踏まえて、中国の政府間財政調整のここ数年の新たな展開を検証し、現状での到達点及び残された問題点を整理した上で、今後の課題を検討することが本稿の目的である。
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