宮沢賢治「虔十公園林」にみる農村景観と都市公園 : 作品背景としてのイーハトヴの風土と都市公園の略史
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概要
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宮沢賢治の作品研究や読解には、岩手県の風土の研究や理解が不可欠といわれる。童話「虔十公園林」は、この風土を主要な舞台とし、当時の都市公園の景観が背景に描かれている。風土は自然環境と社会環境で捉えられる。ここでの論考は、次の3点にまとめられる。1)この短篇に出現した人口林の種スギと自然林の種ブナについて、作品にどのように描かれているかを分析し自然景観の植生景観を復元した。ここで復元されたスギ優占の屋敷林、社寺林などは、地域の人々が生産や生活のために造った、人文景観の集落景観でもあった。一方、宮沢賢治が、自然林のブナをどのような生態学的特性をもつ植物と捉えていたかは解明できなかった。2)短篇の題名にもなった術語「公園林」は、1912年に出版された林学者本多静六著『造林學本論』に由来し、農村のスギ植栽林を都市の児童公園の緑地に変換するこの物語において、重要な役割を果たす科学的内容をもっていた。しかしながら、その概念を作品に適用した宮沢賢治には、科学的中身の吟味や用法の適否を検討することなどの関心が薄かった。3)「虔十公園林」は児童公園の機能を付与されている。このアイディアは、日本の都市公園成立に関わる文献と報道情報や、東京などの都市公園から構築された。とくに、1924年の関東大震災復興事業案に提示された小公園は、この短篇成立に重要な役割を果たした。
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