母体胎児外科手術の倫理問題
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概要
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母体胎児外科手術は、妊娠した女性の健康な身体に対する大きな侵襲を伴うため、その同意の真摯性への考慮が不可欠の条件である。本稿では、母胎に対する侵襲性に留意して母体胎児外科治療をめぐる倫理的問題について吟味する。まず、母体胎児外科手術に肯定的な立場をとる「患者としての胎児」論を検討する。そして、仮に胎児を一人の患者とみなすことが妥当だとしても、妊婦の同意の真摯性に対する考慮の重要性を確認する。次に、母体胎児外科手術に同意する妊婦の意思決定に影響を与えている諸要素を検討する。母体胎児外科手術に対する妊婦の評価は、手術の危険性と害と手術の利益との比較衡量に基づいて下される。母体胎児外科手術そのものは妊婦にとって身体的利益はない。妊婦にとって想定されうる利益は、子の障害が軽減されることによる心理的・社会的利益である。この心理的・社会的利益の内実を検討し、障害者とその家族、とくに女性に対する社会的支援の重要性とともに、母体胎児外科手術が許容されるための必要な条件を明らかにする。
- 2010-09-23
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