多形腺腫における腫瘍性筋上皮細胞マーカーとしてのWT1の有用性に関する検討
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概要
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多形腺腫は唾液腺おいて最も高頻度に発生する良性の上皮性腫瘍である.導管上皮由来の細胞と,筋上皮細胞由来の細胞が二相性に増殖していることが病理学的特徴である.WT1遺伝子は小児腎腫瘍であるWilms腫瘍の原因遺伝子として単離されたが,現在ではさまざまな腫瘍においてWT1遺伝子および蛋白の発現が確認されている.しかし,多形腺腫での発現はいまだ明かでない.本研究では多形腺腫におけるWT1蛋白の発現を免疫組織化学的に検索し,腫瘍マーカーとしての有用性を検討した.また,併せてRT-PCRおよびin situ hybridizationにてWT1 mRNAの発現を検索した.免疫組織化学的検索には多形腺腫のホルマリン固定パラフィン包埋組織30例を用い,対象組織として正常唾液腺を使用した.また,多形腺腫8例においてRT-PCRを,さらに3例においてin situ hybridizationを行い,WT1 mRNAの検索を行った.その結果,多形腺腫30例の全例において増殖した腫瘍性筋上皮細胞にWT1蛋白の発現がみられた.RT-PCRでは8例中7例にWT1 mRNAの発現がみられ,in situ hybridizationでは増殖した筋上皮細胞にWT1 mRNAの発現がみられた.したがって,多形腺腫の腫瘍性筋上皮細胞にWT1蛋白およびWT1 mRNAが発現しており,本腫瘍の診断にあたって,抗WT1抗体を用いた免疫組織化学が腫瘍性筋上皮細胞マーカーとして有用であることが示唆された.
- 2011-05-10
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