市民参加型調査からの問いかけ(<特集>市民調査の可能性と課題)
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概要
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本稿の目的は,市民参加型調査の活性化と対象の拡がりの背景を,環境問題の質的な変化という視点から明らかにすることである。市民参加型調査そのものは比較的長い歴史を持つが,現在では人文・社会科学的な分野を対象とした事例も存在する。また,調査事例そのものも増えている。その背景として,環境問題の質的変化との関連について考察した。具体的には,生物多様性の保全という課題を扱いながら,問題解決の対象や手法の拡張という変化が存在していることを指摘した。また,このことが問題解決過程の複雑化に影響しており,自然再生事業などにおいては社会的合意に基づく順応的管理の手法が定着しつつあることを明らかにした。その結果,問題解決に必要とされる情報の質も変化しており,これが市民参加型調査の活性化という現象の背景に存在しているとした。また,順応的管理の手法における社会的合意形成と科学的手続きの整理を分析し,自然科学者の役割の変化や当事者性を持つ主体の多様化という現状を明らかにした。さらに,この変化は環境社会学における従来型の「科学知」批判や「当事者視点」の自明性を相対化しつつあるとした上で,今後求められる役割についての考察を加えた。
- 環境社会学会の論文
- 2007-10-31
著者
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