環境創造における社会のダイナミズム : 風力発電事業へのアクターネットワーク理論の適用
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概要
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本研究の目的は,自然再生や環境ビジネスといった取組みを環境社会学の対象として分析・評価するための方法論を確立することである。環境創造型というべきこれらの取組みでは潜在的/顕在的な方向性が流動的であるため,新たな分析手法を提示すると同時に,具体的な事例についての分析も試みた。手法に関しては社会的リンク論を発展させ,「よそ者」の多義性に伴う問題を踏まえて定式化した。具体的には,科学人類学におけるアクターネットワーク理論を応用し,複数の社会状況と多様な主体との関係性の全体像を対象化した。この手法では人やモノがアクターワールドという場に集約される過程を図式化するが,その紐帯となるシナリオを分析し,環境社会学的な理念によって評価することによって現象と理念の両方を問うという応用方法を提案した。また,この方法の有効性を示すために事例分析を行い,風力発電事業における利害構造を比較した。その結果,通常の環境ビジネスとして取り組まれている風力発電事業と市民出資による事業の間には,主要な主体の利害に顕著な差があることを明らかにした。また,その背景として利害対象者の拡大とシナリオの多様性とが関連していることを指摘した。さらに,社会的ネットワークの潜在的/顕在的な可能性という視点から,両者には経済的利益の追求と興味関心による共同性という差違が存在することを指摘した。最後に,この手法の有効性を確認し,流動性の高い環境創造型の取組みを扱うことが可能になるとした。
- 2005-10-25
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