プラッド錯視を引き起こす視覚神経ネットワークの数理モデル
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
プラッド錯視現象ではコントラストに依存して2通りの知覚を生成する.ひとつはコンポーネント知覚と呼ばれ,2つの独立した方向に運動する格子を知覚する現象であり,もうひとつはパターン知覚と呼ばれ,2つの格子の交点がそれぞれの格子の速度のベクトル和の方向に運動しているように知覚する.また,コンポーネント知覚は格子の交点のコントラストが低い場合に優位に誘導され,パターン知覚はコントラストが高い場合に優位に誘導される.従来,プラッド錯視は高次視覚野において初めて生成されると考えられていたが,我々はコンポーネント-パターンの交替が第一次視覚野においても誘導される可能性を理論的に示すために,神経ネットワークの自己組織化モデルによって得られた網膜-LGN-視覚野経路にFitzHugh-Nagumo神経細胞モデルを適用し,モデル網膜上にプラッド刺激を提示したときの応答特性を調べた.その結果,皮質内相互作用が強い場合には,低コントラストではコンポーネントに応答する細胞活動がパターンに応答する細胞活動よりも高かった.また,高コントラストではコンポーネントに応答する細胞活動が低下し,パターンに応答する細胞活動が優位に上昇した.一方,皮質内相互作用が弱い場合には,コントラストの上昇とともにコンポーネントに応答する細胞活動もパターンに応答する細胞活動も同じレベルから単調に増加し,コンポーネント-パターンの交替はみられなかった.このことから,皮質内相互作用が細胞活動を調節することによってコンポーネント-パターンの交替が誘導されることが示された.
- 2011-02-28
著者
-
田中 繁
理化学研究所脳科学総合研究センター
-
田中 繁
電気通信大学
-
宮下 真信
国立沼津工業高等専門学校制御情報工学科:理化学研究所脳科学総合研究センター
-
紅林 広亮
沼津工業高等専門学校専攻科
-
紅林 大地
沼津工業高等専門学校
-
宮下 真信
沼津工業高等専門学校
関連論文
- インターナルクロックモデルに基づくロボット制御法の実現
- インターナルクロックモデルに基づくロボット制御法の実現(セッション1)
- 小脳顆粒層をモデル化したスパイキングネットワークの研究 : NMDA受容体を介した同期発火状態と時間表現状態の遷移(バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング)
- 小脳顆粒層のスパイキングネットワークモデルにおける状態遷移とタイミングメカニズムに関する研究(機械学習,一般)
- 小脳スパイキングネットワークモデルにおける条件刺激強度依存性タイミング制御
- EU Advanced Course in Computational Neuroscience 1999の報告
- 小脳スパイキングネットワークモデルにおける条件刺激強度依存性タイミング制御
- 外側膝状体における左右眼相互抑制が皮質受容野の形成に及ぼす影響
- 側方結合のシナプス伝達のゲート作用は視覚野コラム形成にどのような影響を与えるのだろうか?モデル研究(バイオサイバネティックス, ニューロコンピューティング)
- 側方結合シナプス伝達のゲート作用が視覚野コラム形成において演じる役割
- 側方結合シナプス伝達のゲート作用が視覚野コラム形成において演じる役割
- 27a-H-5 大脳皮質視覚野における神経回路の自己組織化IV : MT野の方向選択性コラムの自己組織化
- 27a-H-3 大脳皮質視覚野における神経回路の自己組織化II : 単純型細胞の受容野の自己組織化
- FPGA上に実装した小脳ネットワークモデルにおけるタイミングメカニズムの研究(脳のモデルと生物模倣情報処理1,生物模倣情報処理,機械学習,一般)
- EU Advanced Course in Computational Neuroscience 2000 参加報告
- ニューロイダルネット上における順序情報の生成と学習
- 1998 Crete Course in Computational Neuroscienceの報告
- 第2回計算論的神経科学クレタコースのご報告
- 競合型神経ネットワークのダイナミクス : WTAからWinners-Share-Allへ
- 発達期における単一方位視体験による方位マップ改編に関する理論研究 (ニューロコンピューティング)
- 技術者教育のための工学数理の力学教材の改定(22):バネ振子の非線形振動の数値解析
- Positive Feedback Model for City Vitalization
- 運動方向を検出する大脳皮質視覚野の自己組織化のモデル
- Liquid state machineを用いたタイミング制御システムの研究
- プラッド錯視を引き起こす視覚神経ネットワークの数理モデル
- 発達期における単一方位視体験による方位マップ改編に関する理論研究
- 技術者教育のための計算流体力学教材の改定(3):バネ振子の非線形振動の多重尺度法による解析と数値解析